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どうにも不愉快なコラムを読んでしまった。そのコラムについて意見を書こうかどうしようか迷ったあげく、やはり書いておくことにした。そのコラムとはライディングスポーツ誌'97年12月号、97ページに掲載されていたY氏のコラムである。Y氏はライディングスポーツ誌のスタッフである。 Y氏はコラムで 「今のレースファンには失望している。テレビ大阪の中継を批判する前に、現在のレース界の状態を考えて欲しい。ミーハーレースファンもグランプリレベルになって欲しい」 と書いている。私も似たような意見を持っているので、言いたいことは良く理解できる。しかし、同じレースファンの意見ならともかく、彼は「プロの雑誌屋」であり、しかも当の雑誌のスタッフである。私はそのことについて非常に憤りを覚えた。 Y氏はどのような「今のレースファン」に失望しているのかを明確にしていないが、文面から「ミーハーから脱却しないレースファン」だと私は読み取った。では「ミーハーファン」とは何ぞやと言うと、おそらくライダーをアイドル視しているファンではないかと思われる。思われる、なんていう曖昧な言葉も使いたくないのだが、コラム内で説明されていないのだから仕方がない。この点だけでも彼はプロの物書きとして失格だと思う。対象がハッキリしていないのだ。 編集部に届いたテレビ大阪を批判する読者からのハガキに対し、前述の通りY氏は 「でも、考えて欲しい。こうしなければならない、現在のレース界の状態を」 と答えている。私は友人との会話やレースファン同士でこのようなやり取りがあるのは大変意義のあることだと思うが、レースファンに情報を与え、啓蒙していく立場にある業界を代表するレース誌のスタッフにこの言葉を吐かれると、「だったらお前は自分の雑誌で 『こうしなければならない、現在のレース界の状態』 を、読者に対して十分説明してきたのか?」と問いたくなる。テレビ大阪が酷くバランスの悪い中継をしていたのはシーズン中盤までで、終盤には随分良くなっていた。だとすると、批判のハガキはもう随分前から届いていたはずだ。RS誌の読者投稿欄にも載っていた。しかし、編集側から『こうしなければならない、現在のレース界の状態』は何ひとつ提示されていなかったではないか。 テレビ大阪の志はともかく、確かに当初の中継は酷かった。そのことに触れずに「考えて欲しい」と言われても、視聴者が納得するとは思えない。鈴鹿のGP125のレースを見せずに、どうやって上田の凄さをレースファン以外の人に理解してもらえるというのか。グラビアクイーンを呼ぶのはいいが、彼女らを目当てで見るような層を取り込みたいと本気で考えているのか。親交のある山田純氏が始めたということで、あの酷かった構成を無批判で受け入れているのではないか。ハガキの送り主に対する書き方と、山田氏に対する書き方では、明らかに温度差を感じる。私はそこにとても不快感を持った。 ファンは自由なのだ。対象に意見するのも批判するのも何に興味を持つのも。そのファンに対して「グランプリレベルになりませんか?」なんて偉そうに講釈すること自体、間違っているのだ。どんなファンであっても支えてくれているのはファンであって、マスコミではない。ファンが離れていくのは面白くないからだし、ファンには宗教のように布教しなくてはいけない義務も無い。だいたい興味のある人はほっといたって自分で勉強するし、興味の無い人に何を言っても興味は無いのだ。でも、そのことには何の問題も無いし、ましてや編集スタッフから忠告される筋合いのものでは断じてない。そもそもグランプリレベルのレースファンって何なんだ。私の知るかぎり、今だって多くのレースファンは一人でもファンを増やそうと努力している。 それよりも逆に「グランプリレベルの誌面作りをしませんか?」と問いたくなるのは私だけだろうか。ファンにあれこれ言う前に、ファンが自分でレース界の状態が判断できるだけの情報を与えるのが、レース誌の使命ではないかと読者の一人として考える。メーカーや団体の顔色を気にせず、現在のレース界の問題点を根本から分析した記事を今まで私はライディングスポーツ誌上で見たことが無い。そこを取り上げて、初めてファンに何かを訴えることができるんじゃないのか? もちろんY氏の真意はそうではないかもしれないが、何度読んでも今ひとつ理解できないコラムだった。テレビ大阪の中継を批判した読者を「レース界の現状を理解していない」と見下し、酷い構成をした山田氏を無批判に持ち上げ、ただのミーハーからレースをより知ろうとするファンがさも正しいかのように取り上げた、ただそれだけのコラムとしか思えない。結局、何が言いたいのかが分からない。もちろんこれは私の個人的な感想でしかないが、なんだかレースがイマイチ盛り上がらない要因の一端を垣間見たような気がした。業界の勘違いというヤツ。 プロの物書きなら「ファンに失望してる」なんて口が腐っても言うな。指が折れても書くな。ハガキを送ってくれた人はRS誌の読者だ。と言うことは、いつもRS誌を読んでいるはずだ。そういう読者に勉強してくれと言うのなら、勉強する気を起こさせられない記事しか書けない、お前の方が悪いのだ。「ファンに失望している」なんて言う前に、誌面に失望しているファンがいることを認識しているのか。
補記('98年3月3日) RS誌'98年4月号に、現在のレース界の状況を考え、将来を展望していくという記事が掲載された。もちろんこのコラムとは無関係だと思いますけど、やっぱりああいう記事が載らないと普通の読者には判断材料が無いですから、今後も定期的に掲載して欲しいですね。内容的にはあと2ページくらい増やして、もっと問題に突っ込んで欲しかった。今後に期待します。 |